再発・進行がんを好転させる―― 「HITV療法 」

ステージⅣの進行がん、及び再発がんに対する標準治療は功を奏するケースが少なく、結果、緩和治療を余儀なくされる場合もあります。免疫療法も同様で、この段階から病状を好転させられる治療法は、全世界的にもほんの一握りにすぎません。HITV療法は、その一握りの中でもトップクラスの治癒例を排出しています。

●殺傷力の高い免疫細胞を確実に誘導

がんを治せるのは、“早期発見・早期治療”の条件が整った場合のみ――。それががん治療の常識でした。原発巣から他の臓器に転移があったり、手術や抗がん剤治療を受けたあとに再発してしまうと、標準治療で治癒へ導くのはとても厳しいのが現実です。HITV療法は、標準治療では手の負えない“進行がん”“再発がん”を治癒させることを目的として、研究・開発された最先端免疫療法です。

HITV療法を語る上で、どうしても触れておかねばならないのが、免疫機構の司令塔とも呼ばれる“樹状細胞”です。樹状細胞は2011年、米国のロックフェラー大学教授ラルフ・スタインマン博士がノーベル医学・生理学賞を受賞したことで脚光を浴びました。
スタインマン博士は、1973年に樹状細胞の役割を解明し、一途にこの細胞の研究に取り組んできました。当初はほとんど無視されるような存在だった樹状細胞ですが、スタインマン博士の研究によって、免疫機能の中で、とても重要な働きをしていることが判明し、ついにはノーベル賞という最高の栄誉を、博士にもたらせることになったのです。
樹状細胞は体にとっての異物を認識し、それを免疫の攻撃担当である“T細胞”に伝えるという役割を果たしています。HITV療法は樹状細胞に攻撃すべき異物、すなわち、がん細胞の目印(抗原)を確実に認識させることで、より殺傷力の高いCTL(キラーT細胞)を誘導し、がんの消滅を図ります。
がん細胞は通常のウイルスと異なり、自分の目印(抗原)を隠してしまうため、免疫機構の監視に引っ掛かりずらいという特性があります。そのため、従来の免疫療法ではなかなか効果を得られませんでした。しかし、樹状細胞を利用することで、高い成果を上げられるようになったのです。

●“治療型”がんワクチン

HITV療法は“がんワクチン”のひとつです。
がんワクチンには、基本的に大きく「予防型」と「治療型」に分けられます。「予防型」は、標準治療によって病巣を取り除いた患者さんが、主に再発予防のために使うワクチンです。「治療型」は、標準治療では手の負えないがんを治癒させることを目的としたワクチンです。HITV療法は、世界でも数少ない「治療型」のワクチンに分類されます。
HITV療法の基本的な流れを紹介します。まずは患者さんの血液を採取します。人工透析の要領で、体外に血液を循環させ、そこから遠心分離によって“単球”という成分を取り出します。この一連の作業を「アフェレーシス」といいます。所要時間は3時間ほどかかりますが、患者さんの体への負担はほとんどありません。
そして、この単球にサイトカイン(白球因子)を加えて培養することで、抗原に対する学習機能を持った樹状細胞を作り上げます。
次に培養した樹状細胞を直接腫瘍内へ導入します。樹状細胞は速やかにがんの目印(抗原)を認識します。そして、T細胞に「こういう特徴をもった細胞を攻撃しなさい」と、がんの目印を伝えるのです。
次の段階として、放射線療法や化学療法とコラボレーションする場合もあります。このような他療法と親和性が高いのも免疫療法の特長ですが、特に“強度変調放射線治療(IMRT)”とのコラボでは、高い治療成績を上げています。

●目に見えないがん細胞を駆逐する

HITV療法によって、樹状細胞は確実にがんの目印を認識し、T細胞に昼夜を問わず攻撃指令を出し続けます。結果、免疫機能は常にがんを攻撃する状態にセットされますので、がんの増殖を止め、縮小させ、やがて消し去るという流れを作ることが可能なのです。
しかし、相手は進行・再発がんです。目に見える大きさの腫瘍は消失したとしても、微細ながん細胞が血液に乗って全身に散らばっています。しかし、こうした目に見えないがん細胞に対してこそ、HITV療法は秀逸な効果を発揮するのです。殺傷力の高い優秀なCTLが常時全身をパトロールしていますので、がん細胞を発見するや否や、即座に攻撃に移るのです。CTLは常に増殖しているので、一度治療を受けると長く効果が持続することも、HITV療法の利点でしょう。
進行がん、再発がんと診断されても絶望することはありません。免疫力という自分の体に備わった力を最大限に発揮させれば、どんなに厳しい状況からでも回復する可能性があるということを覚えておいてください。
HITV療法は2015年より、米国メリーランド州立大学、マレーシア国民大学、国立台北大学各医学部など多数の研究施設で、臨床研究が開始されます。

 

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