「先進療法」とは?

標準治療では効果が得られなくなったとき、“先進医療”を選択肢として選ぶ場合もあるでしょう。先進医療とは、厚生労働大臣が定める施設基準に適合する医療機関で実施される“先端医療”のうち、厚生労働大臣の承認を受けたものを指します。先進医療にかかる技術料以外の診察・検査・投薬・入院料などは健康保険の給付対象となりますが、先進医療の技術料は健康保険の給付対象外となるため、原則的に全額自己負担となります。
先進の放射線治療においては「高精度照射の定位照射(STI)」「強度変調放射線治療(IMRT)」「粒子線治療(重粒子線、陽子線)」が注目されています。現在、STIとIMRTは保険適応となっていますが、粒子線治療は適応になっていないため、300万円前後がすべて自己負担になります。

●定位放射線照射(STI)――対象は3㎝以下の腫瘍

定位放射線照射とは、病巣に対して多方向から放射線を集中させる方法です。通常の放射線治療と比較すると、周囲の正常組織を侵してしまう線量を極力減らすことが可能になりました。定位放射線照射は、“ガンマナイフ”に代表される1回照射の「定位手術的照射(SRS)」と、数回に分けて照射する「定位放射線治療(SRT)」に大別されます。定位放射線照射では、治療装置や患者さんを固定する精度をミリ単位で管理しています。
定位放射線照射の対象は小さな病巣で、おおむね3㎝以下が適応とされています。脳の手術療法が難しい病巣や、肺の病巣(肺がんや転移性肺腫瘍)に応用されています。また、他の部位への応用も検討されています。

●強度変調放射線治療(IMRT)――腫瘍の形状に合わせて照射

強度変調放射線治療とは、精密なコンピュータ操作によって腫瘍形状に即した線量分布を可能にし、正常組織の被爆線量を劇的に低減させた放射線治療です。
これまで、がんに放射線量を集中させるさまざまな方法が追求されてきました。しかし、従来の方法では、がんと正常細胞が複雑に近接する場合、がんだけに十分に照射することはできませんでした。これを克服するために強度変調放射線治療(IMRT)が開発されたわけです。
IMRTでは最新のテクノロジーを用いて、照射野内の放射線の強度を変化(変調)させて照射します。これによって腫瘍に凹凸があっても、その形に合わせた線量分布を形成することができるわけです。IMRTが有用ながんには「前立腺がん」「頭頸部がん」「脳腫瘍」などがありますが、それ以外のがんにも適応が広がっています。
IMRTは、日本でも2000年ごろから開始され、2006年には先進医療に認められました。先進医療は通常の保険診療費に加えて70〜100万円程度の自己負担が必要となります。

●粒子線治療(重粒子線、陽子線)――副作用を極力抑える

がん治療に利用される放射線は、大きく光子線と粒子線に分けられます。光子線とは電磁波であり、X線・ガンマ線など従来の放射線治療に利用されています。粒子線はその名のとおり、水素の原子核や炭素の原子核等の粒子を利用した放射線で、これらの粒子を用いた放射線治療を「粒子線治療」と呼んでいます。粒子線とは、電子よりも重い粒子である重粒子、陽子、π(パイ)中間子などを指しますが、ここでは、「重粒子線治療」と「陽子線治療」を紹介します。

[重粒子線治療]

重粒子線量をがんの位置や形状に合わせて調節し、ねらい撃ちする治療法ですから、切らずに治す最先端の治療法として注目されています。しかし、この治療には加速器という大型の装置が必要なため、受診施設が限定されてしまうことが難点です。現在、普及を目指して小型の加速器の開発が進められています。重粒子線治療の特徴は次のとおりです。

  • 臓器の機能や体の形態を損なわない
  • 早期なら根治も可能
  • 痛みを伴わない
  • 副作用がない
  • 社会復帰までの期間が短い
  • X線では治療困難な深部がんにも適用できる
  • 高齢者にも適用できる

しかしながら、重粒子線治療はすべてのがんに適応できるわけではありません。特に胃や腸のように不規則に動く臓器のがんや、白血病のような全身に広がっているがん、広く転移したがん、すでに良好な治療法が確立しているがんには不向きでしょう。対象となるのは、局所にとどまっているがん、悪性黒色腫のように通常の放射線が効きにくいがんなどです。

[陽子線治療]

陽子は水素というもっとも軽い元素の原子核で、それを加速させたものが陽子線です。陽子線は体内に入っても表面近くではエネルギーを放出せず、停止着前にエネルギーを放出して大きな線量を組織に与える性質があります。この性質は発見者の名をとって「ブラック・ビーク」と呼ばれていますが、がんの治療においては、病巣の深さや大きさに合わせてビークの深さや幅を調整します。
通常の放射線治療で用いられるX線では、病巣の前後にある正常の組織も同様の線量を受け、それが副作用を生じさせる原因になります。しかし、陽子線の場合には病巣のみに効率よく線量を集中させられるので、副作用を大幅に抑制できるのです。
陽子線治療は、「脳腫瘍(原発性のみ)」「頭頸部腫瘍」「肺がん」「肝細胞がん」「前立腺がん」などが適応になります。

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