がんのステージの分類と標準治療

がんは進行度に応じて、基本的にステージ0~ステージⅣまでの5段階に分類されます。ステージ0は、がんが粘膜内(上皮細胞内)にとどまっており、リンパ節には転移していない状態。手術で腫瘍を取り除ける段階です。続くステージⅠ、Ⅱ……と、病状が進行するに従ってステージが上がっていきます。この項ではがんのステージ分類と、各ステージにおける基本的な治療法について解説します。

●がんのステージ分類

がんと診断されると「あなたのがんはI期です」というように、医師からいわれる場合があります。Ⅰ期というのは“がんのステージ”を指しており、がんがどれくらい進行しているのかという進行度合を意味しています。
がんのステージは、ステージ0期からIV期まで5段階あり、ステージIVがもっとも進行している(悪化した)状態です。ステージの判定は、T.がんの大きさ(広がり) N.リンパ節への転移の有無 M.他の臓器への転移、という3つの要素を組み合わせて行われ(TNM分類)、各ステージに応じた治療が行われます。

●3大療法の長所と短所

現在、一般的に行われているがんの治療法は、「手術療法」「化学(薬物)療法」「放射線療法」の3つで、これらを総称して「がんの3大療法(標準治療)」と呼んでいます。これらの療法は、多くの科学的根拠(エビデンス)に基づいて実施されており、2つ以上の療法を組み合わせるケースもあります。しかし、それぞれの療法には限界や問題点も指摘されており、今後新たな標準治療の選択肢が増える可能性も少なくありません。

◎手術療法――病巣を切除する

手術療法は、がんの病巣を切除して取り去る治療法です。病巣の周辺組織やリンパ節に転移がある場合は、一緒に切除します。早期のがんや、ある程度進行しているがんでも、切除が可能な状態であれば手術療法が積極的に行われます。
手術療法のメリットは腫瘍が一気に切除できることと、検査ではわからないごく小さな転移(微小転移)がなければ完治する可能性が高いことです。
しかし、体にメスを入れるため、創部(きず)の治癒や全身の回復にある程度時間がかかり、切除した部位によっては、臓器や体の機能が失われる場合もあります。最近はこうしたデメリットを回避するため、切除する範囲をできるだけ最小限にとどめる方法(縮小手術)や、内視鏡(小型カメラ)を用いた「腹腔鏡下手術」や「胸腔鏡下手術」など、体への負担(侵襲)を少なくする手術が普及してきました。

[手術療法の問題点]
  • 臓器を切除するので、臓器や体の機能が失われてしまうことがある。
  • 創部(きず)の治癒と全身の回復に時間がかかる
  • ごく小さな転移(微小転移)は治療できない
  • 手術ができない場所にできたがんには適応できない
[問題の対応策]
  • 縮小手術、内視鏡下手術などによって、体への負担(侵襲)を小さくすることが可能

◎化学(薬物)療法――微小転移にも効果的

化学療法は、主に抗がん剤によってがん細胞を死滅させたり、増殖を抑えたりする療法です。抗がん剤の投与は、点滴や注射や内服で行います。抗がん剤は血液を通して全身を巡るため、ごく小さな転移にも効果があります。一方、脱毛・倦怠感・しびれ感・吐き気などの副作用や、肝臓、腎臓、造血器官などへの障害が避けられず、患者さんにとって辛い治療になってしまう場合が少なくありません。しかし、最近は吐き気などの副作用を和らげたり、白血球の減少を抑えたりする薬剤の開発などによって、日常生活に支障がない程度に症状を軽くできるケースも見られるようになってきました。また、がん細胞だけに作用する分子標的治療薬の開発が進み、実用化されてきています。
一方、乳がん、子宮がん、甲状腺がん、前立腺がんなど、ホルモンが密接にかかわっているがんに対しては、「ホルモン療法(内分泌療法)」が多く行われています。特定のホルモンの分泌や作用を抑制することで、がん細胞の活動を抑えて腫瘍を小さくしたり、転移や再発を抑制したりします。副作用は比較的少なめですが、長期間治療を続ける必要があります。

[化学療法の問題点]
  • がん細胞以外の健康な細胞にも影響を与えるため、さまざまな副作用が出現する可能性がある
  • がんの種類によっては抗がん剤の効果が現れにくい
  • 高額な薬品を長期間にわたって使用する場合がある
[問題の対応策]
  • 副作用を抑える薬剤で痛みなどを和らげる

◎放射線療法――効果が格段に向上

放射線療法とは、がんの病巣部に放射線を照射して、がん細胞を死滅させる局所療法のことです。治療前の検査技術や照射技術の進歩によって、がんの大きさや位置を正確に測定し、病巣部分だけに集中的に照射することが可能になり、効果は格段に向上してきています。
体の外側から放射線を放射する「外部放射」だけでなく、放射線を放出する物質を針やカプセル内に密封し、病巣部に挿入する「密封小線源治療」や、放射性物質を注射や内服で投与する「放射性同位元素内用療法」など、治療のバリエーションも増えてきました。
放射線療法に使用される放射線としてよく知られているのはX線ですが、その他にも重粒子線などを使った「粒子線治療」も実用化されてきました。

[放射線治療の問題点]
  • 放射線の影響により、照射部分に炎症症状などの副作用が現れることがある。また、めまいなどの全身症状が現れることもある
  • 密封小線源治療や放射性同位元素内用療法においては、一部行動の制限が必要になる

[問題の対応策]

  • 副作用に対しては症状を和らげるケアを行う
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