体内に潜む病気の“芽”
病気は、ある日突然発症するわけではありません。土にまいた種が芽を出し花を咲かすように、じわじわと成長していくものです。多くの人は体調が悪くなったり、健康診断で異常が発見されたことをきっかけに、はじめて病院へおもむきます。しかし、その時点ではすでに病気が進行している場合もあり、「もっと早くに受診しておけば良かった」と後悔することも少なくありません。
東洋医学でいう「未病」は、文字通り「未だ病気ではない」という意味。病気ではないけれど“病気へ向かって進んでいる”、“病気になる危険性が高まっている”という状態だと考えればいいでしょう。土にまかれた種から芽は出たものの、まだどんな花が咲くかわからない段階――。確かなのは、このまま時間が経てば間違いなく“病気”という花が満開になるということです。
「私は毎年、人間ドックを受けているので大丈夫です」
という人もいるかもしれません。しかし、現代の医療では、検査結果によって“病気か健康か”という白黒(白黒に傍点)が判定されます。グレーゾーンとなる未病には、まったく目が向けられていないのです。だから、限りなく黒に近いグレーであっても、人間ドックでは「異常なし」と判定されることになってしまうのです。グレーは、やがては黒になります。人間ドックでは異常なしだったのに、数ヶ月後に深刻な病気が発病したという人がいるのは、そういう理由です。未病という考え方を積極的に取り入れ、その時点で進行を防ぐための対策をとれば、病気はもっと少なくなるはずです。
未病のサインを見逃さない
病気にならないためには、未病のサインを見逃さないことがとても大切です。どこかに不調がある場合、体は必ずサインを出してくれます。しかし、最初のうちは大きな苦痛をともなうサインではないので、ついつい見逃してしまうのです。
たとえば、このごろ疲れやすいと感じることがあったとします。それだけのことで病院へ行く人はほとんどいないでしょう。仮に病院へ行っても、検査で問題が生じなければ、恐らく何の治療も行わないのではないでしょうか。しばらくすると、疲れやすいのが当たり前になります。感覚がマヒしてしまうのです。体は疲れやすいというサインを出して、“どこかに異常があるよ”と訴えているにもかかわらず、本人はそれをほったらかしにしているわけです。そのため、病気の芽はどんどんと大きくなってしまい、挙句の果てにひどい苦痛に襲われ、病院へ駆け込む事態に至ってしまうわけです。
ほかにも、体調不良のサインはたくさんあります。眠れない、食欲がない、手足が冷える、めまいがする、頭が痛い、肩や首がひどく凝る、便秘がち、肌が荒れる・・・。こうしたサインが出ているときには、どこかに異常があるかもしれないと考えて、毎日の生活をチェックをしてみるといいでしょう。不規則な生活が続いていないだろうか。食べ過ぎたり、飲み過ぎたりしていないだろうか。運動不足ではないだろうか……等々。そして、何か不調の原因として思い当たることがあれば改めます。そうした心がけが、病気から身を守るためにはとても大切なことなのです。
未病を摘み取る“鍵”は免疫力にあり
未病を考える上で、遺伝的な要素もとても重要なヒントになります。たとえば、家系に糖尿病が多ければ、自分にも同様のリスクがあると考えた方がいいでしょう。自覚症状もなく、検査で血糖値が正常であっても、自分はグレーにいると考えて、食事など日々の生活習慣に注意する必要があります。
がんの場合も同様です。がんが多い家系の人は、食生活やストレス管理をないがしろにしてはいけません。また、遺伝子検査などを積極的に活用し、あらかじめ自分の“がんリスク”を把握しておくことも大切です。
がんが画像診断などで発見されるのは、5㎜くらいの大きさになってからです。がん細胞が分裂増殖してその程度の大きさになるには、5年から20年かかるといわれています。つまり、がんは未病の期間がとても長い病気であり、その分がんを芽のうちに摘むチャンスも数多く残されているというわけです。
未病のうちにがんの芽を摘み取るため、重要な働きをするのが「免疫力」です。免疫力を高めるにはさまざまな方法がありますが、まずは食事や睡眠、運動、ストレス管理など、日々の生活を健康に保つように心がけましょう。より積極的に免疫力をアップするためには、アジュバント療法なども効果的です。