●5年生存率をアップさせる“ハスミワクチン”
がんの治療は各ステージに合わせて行われますが、ステージⅠ~Ⅲは「手術」「抗がん剤」「放射線」といった標準治療が有効な段階。しかし、ステージⅣになると多臓器に転移があるので、まず手術ができなくなってしまいます。ステージⅣまで進むと、がん細胞の浸食が進み、一般的には治癒にこぎつけるのは厳しい状態です。
ステージⅠ~Ⅲの段階でがんが発見され、手術によって病巣が取り切れたなら、とりあえずは一安心です。しかし、それで絶対に大丈夫というわけではありません。がんという病気は、常に再発の危険性をはらんでおり、再発すると治療が格段に難しくなるからです。
この再発予防に威力を発揮しているのが「ハスミワクチン」です。いくら手術で病巣を取り去ることができたといっても、目に見えないレベルでがん細胞は体内に散らばっています。この微細ながん細胞を放置しておくと、次第に成長して気がついたら再発していたということにもなりかねません。
こうした再発の〝種子〟を摘み取るのが免疫の力です。ハスミワクチンは、5日に1度〝免疫賦活物質〟を皮下に注射することで、患者さんの免疫力をアップさせ、再発を防ぎます。
次のグラフは、がんの種類別に標準治療を受けた後にハスミワクチンを〝使った場合〟と〝使わなかった場合〟とで、5年生存率がどれくらい違うかを比べたものです。
たとえば、「乳がん」。ステージⅠの人は、ハスミワクチンを使った場合の5年生存率は96・2%。対して使わなかった場合は90・6%です。ステージⅡだとハスミワクチン使用が96%に対して、未使用の場合は78・6%まで落ちてしまいます。ステージⅢ、Ⅳになればもっと差がつきます。
ハスミワクチンは再発予防に重点を置いた「予防型ワクチン」ですから、基本的には、ステージと0~Ⅱの患者さんが対象です。データを点検すると、ハスミワクチンを使っている人には、確かに効果が生じているようです。 さらに、データからはⅢ期、Ⅳ期という進行がんに対しても、ある一定の効果を示していることがうかがえます。特に乳がんのステージⅣだと通常10.9%という5年生存率が、61.6%までアップしています。これらのデータがすべてハスミワクチン単独によるものかどうかは判断がくだせませんが、ハスミワクチンが再発予防に良い効果をもたらしていることは間違いないでしょう。ハスミワクチンの生理活性は、2000年に米国メリーランド大学と蓮見癌研究所との共同研究で明らかにされています。
●多臓器転移は「HITV療法」とのコラボで対応
データから見れば、手術で病巣がうまく取り切れたなら、術後にハスミワクチンを使えば安心していられるでしょう。ハスミワクチンによって、再発する・しないを運任せにする必要がなくなったといえるのではないでしょうか。しかし、もちろん絶対ということではありません。再発の危険性は常に頭に入れておく必要があります。
そこで大切なのは、定期的に病院で再発をチェックすること。そして、もし再発が発見された場合は、標準治療で対処できるなら標準治療を受診し、多臓器転移などで標準治療での対処が厳しい場合は、治療に特化したがんワクチンである「HITV療法」が治療の選択肢になるでしょう。
再発すればもう治療法はないというのが標準治療の常識でした。そうして医学に見放された人たちが〝がん難民〟として苦しめられ、悩まされているという現実もあります。しかし、免疫療法の発達により、医療の常識が少しずつではありますが、着実に覆されつつあるのではないでしょうか。「予防型ワクチン」である“ハスミワクチン”と「治療型ワクチン」である“HITV療法”のコラボレーションにより、がん治療の選択肢は確実に広がったといえるでしょう。どんながんでも、決してあきらめる必要はないのです。