自律的に攻撃を仕掛ける
概要
静脈より血液を採取し、リンパ球の一種であるNK細胞を分離します。そして、インターロイキン2という免疫を活性化させる物質を加えて、2週間ほど培養して再び静脈から体内に戻します。活性化したNK細胞にがん細胞を攻撃させ、がんの増殖の抑制や腫瘍の縮小を目指します。
特徴
NK細胞は、人が生まれながらにもっている免疫(自然免疫)のひとつです。常に血流に乗って体内を巡回し、異物を発見すると、即座に攻撃を仕掛けて、それを排除します。免疫力の中心的な役割を演じるT細胞は、攻撃対象を特定してあげないと動かない細胞ですが、NK細胞は自律的に敵味方を判断し、異物の排除を行っています。
NK細胞が体内を巡回して、がん細胞を見つけるメカニズムもわかっています。正常細胞には表面に、“MHCクラスⅠ”と呼ばれる標識(抗原があります。しかし、細胞がウイルスに感染したり、がん化すると、MHCクラスⅠが消えてしまう場合がよくあります。がんの場合だと、60%がこの標識をもっていません。NK細胞は、この標識があるかないかをチェックし、なければ異物とみなして、排除してしまうのです。
健康な人でも、一日に5000~6000個の細胞ががん化しているといわれていますが、NK細胞がその多くを処理してくれています。NK細胞のおかげで、がんの発症を未然に防ぐことができるのです。
ところが、NK細胞は20歳くらいをピークに数が減っていきます。がんは40歳くらいから急激に増えてきますが、NK細胞の活性が低下することと関係が深いだろうと推測されています。NK細胞が減少してがんに対する活性が低下するなら、それを高めてあげればいいというのがNK療法の考え方です。
評価
NK細胞が認識できるがん細胞は大よそ60%といわれています。つまり、40%のがん細胞は見逃してしまうというわけです。殺傷力は強力ですが、それでも、NK細胞療法だけでがん腫瘍を消失させるのは限界があるでしょう。しかし、がんの増殖をストップさせたり、縮小させることによって、患者さんのQOL(生活の質)を高め、延命するという効果が期待されます。
また、活性化したNK細胞は、体の隅々まで巡回しますので、血流に乗って移動するがん細胞があっても、それを発見して排除する可能性が期待できます。つまり、手術などの治療を受けたあとの再発や転移の予防には効果的だといえるでしょう。